統合失調症との付き合い

弟が20代でその診断を受けてから、気づけば10年以上の歳月が流れている。

 

何よりも大変なのは、本人に病識がないこと。一度の入院を経て、薬だけは欠かさず飲むようになったが、病気を受け入れられないため、なかなか前に進めない。

 

ごく稀に、本人から「統失」という言葉が出てくるのを聞くと、「病感」なるものはあるのだろうと思う。病識がないのは、本人の気持ちの問題なのか、病気による脳機能の問題なのか。これに関しては、もっと勉強してみようと思っている。

 

大学時代に発症し、就職するも、程なくして退職。大学院へ。症状が悪化して中退した後は、仕事はせず自宅での生活を続けている。それでもしばらくは、切迫したように資格取得の勉強に取り組み、途中で止めては次の資格に取り組むということを繰り返していた。

 

その間、薬は飲んだり飲まなかったり。暴力を振るったことはないが、見えない何かと闘い、苦しんでいるようだった。被害妄想から、家族を詰問したりすることが毎日のように続いていた時期もある。

 

薬を飲むようになっても、資格試験の勉強を始めると被害妄想の症状が悪化する。障がい者雇用枠での就労は、病識を持てない現段階では、選択肢にない。プライドと偏見のせいだと思われるが、同様に障がい者手帳の取得も拒否している。

 

その一方で、以前のように一般企業に就職することは難しいと思っているようだ。実際のところ、今の状況では障がい者雇用枠での就労も難しい可能性が高い。外に出ても、妄想や幻聴のためか、すぐに帰ってくることもある。以前よりも被害妄想が強く、慢性化してきているようにも感じる。

 

「いま焦って仕事はしなくていいと思うよ。ゆっくり休んだらどう?」

 

そういう話をすると、しばらくは趣味のことや読書などを始めたりするのだが、時間が経つと、やはり気持ちが焦るのか試験勉強に戻っている。

 

焦る気持ちは、わからないでもない。これからどうやって生きていったらいいのか、彼なりに悩んでいるのだと思う。障がい者として社会に出ることも考えられないため、袋小路に入ってしまうのだ。

 

家族として、今後どのようなサポートをしていくべきなのか。

 

まだ答えは出ていない。