ザ!世界仰天ニュースで取り上げられた統合失調症
11月30日に放送された「ザ!世界仰天ニュース 脳の不思議スペシャル」を録画で観ました。気になったことなど含め、感想を書いてみたいと思います。なお、番組の詳細は、このように紹介されていました。
優しかった母がある日、壊れた・・・。幻聴や妄想に苦しみ、統合失調症と診断された。精神は崩壊し戦場と化した生活。36年にわたり娘が見続けた母の衝撃的な姿とは?
現在漫画家として活躍する中村ユキさん。彼女が4歳の時、突然優しかった母が壊れ始める・・・。父の実家に同居、子育てをする生活の中、次第にストレスが溜まってゆく、そしてある日、突然どこからか自分の悪口が聞こえるように。度重なる幻聴に苦しむ母を突如襲ったその病気の正体は、統合失調症だった。妄想などの症状がエスカレート。精神は崩壊し、家は戦場と化した。病気の母とともに生きた36年間の衝撃的な生活とは!?
私は、録画を2回観ました。初回はメッセージよりも、再現VTRが衝撃的で強く印象に残ってしまったのですが、2度目は、番組として事実を誤解なく伝えるための努力はしていることや、中村さんご夫妻の伝えたいメッセージを冷静に受け止めることができました。
ただ、中村さんのお母さんが、寝ている中村さんの顔の上に包丁を下ろして「殺す」と言ったり、包丁を持って「殺す、殺す」と宙に向かって言っているシーンがあり、それは特に衝撃的でした。また、中村さんが入院中のお母さんに電話で暴言を吐いてしまった時、お母さんが絞り出すような声で「死ね、死ね」と繰り返すシーンも強烈でした。
画面には、※症状には個人差があります と注意書きのテロップが何度も出ていたものの、病気を知らない人にとってはどのような差があるのかまではわかりません。病気についての知識がない人が見ると、やはり誤解しかねないのではないかと思います。統合失調症の人は危ない、殺人もしかねないのだという印象を持つ人もいるかもしれません。
症状は人によって違うことはもちろん、お母さんにそのような症状が出ていたのは、薬を処方されながらも飲んでいない時期でした。また、当時は中村ユキさんも病気に対する知識がなく、お母さんに辛くあたることもあったようです。統合失調症の患者にとって、服薬だけでなく、周りで支える家族の理解や言動も回復に大きく影響します。そのあたりの因果関係についての解説が、やや不足しているように感じました。
個人的には、まずは多くの場合、薬を飲んで急性期の症状を抑えることができるということを、もう少し強調して欲しかったと思います。そして、服薬をした上でリハビリをすることにより、社会復帰もできるのだということを多くの人に知って欲しいと思いました。
途中、千葉県にある精神科病院に入院している患者さんや、治療の様子が紹介されていました。その中で、一つの治療法として「電気けいれん療法」の様子が映されていたのですが、その光景は、やはり見る人によっては衝撃を受けるだろうと思います。私も少し怖さを感じてしまいました。頭部に電流を流してけいれんを起こすことで、なぜ脳の機能を改善することができるのか。実際のところ、その理由はよくわかっていないと聞いています。
当たり前の治療法であるかのように紹介されていましたが、電気けいれん療法は、薬物療法や精神療法などで効果が出ない時などに検討される「最終手段」であると認識していました(私の理解が間違っていたら、申し訳ありません)。実際には、効果は持続しないものの即効性があるようで、薬で症状が改善されない方にとっては、有効な治療法になっているようです。
最後の方で、中村ユキさんとご主人が話されていたことが印象に残っています。
【ユキさん】
・統合失調症が回復する病気であることを肌で感じた
・精神疾患には、日常生活の環境が大切。放ったらかしや本人任せにするのではなく、家族みんなで学んでいくことが大事
【ご主人の隆夫さん】
・お母さんを怖がるのではなく、怖いのはその症状を詳しく知らないこと、先入観や、知識がないことだということが、だんだんわかってくるようになった
中村ユキさんは、「家族が病気を理解することが大事」であることを、一人でも多くの人に伝えるため、漫画を書き続けているのだそうです。
中村さんの漫画もそうですが、当事者の家族だけでなく、統合失調症についての知識がない人にも届くような形で情報を発信することは、とても意義深いことだと思います。今回の放送を観て、家族や周囲の人たちが、当事者への理解を少しでも深めるきっかけになることを祈っています。
ディスカッション
コメント一覧
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私も「※症状には個人差があります」のテロップが気になりました。あの程度では、どれくらいの個人差なのかまったく分からないし、逆に偏見をあおるのではないかと思ってしまいます。
ただでさえ、刃物を振り回して暴れるイメージのある精神病(「通院歴がある」という犯罪報道など)ですが、私はそういったことをしたことはありませんし、ブログ村でもそういう人は少ないのではないかと思います。なのに、今回の中村ユキさんのお母さんのような、極端な例を持ち出して放送するのは、どうなのかな~と思いました。もっと一般的な例もあったのではないかと思うのですが、それだと視聴率が稼げないので、見栄えといったら変ですが、インパクトのある映像を使いたかったのでしょうね。
電気けいれん療法については、私も受けたことが無いので正確なことは分かりませんが、色々な情報をあたったつもりですが、とても一般的な治療だとは思えません。どうしてこういう番組になっているのか、理解できませんでした。
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香蕗さま
コメントありがとうございます。香蕗さんも仰天ニュースをご覧になっていたのですね。
勉強会で、どなたかの代わりに中村ユキさんが取材を受けたと聞いたのですが、10月末に中村さんの新刊が出たことも、今回選ばれた理由かもしれません。
調べてみると、仰天ニュースでは何度か統合失調症を特集しているようで、数年前には松本ハウスの「統合失調症がやってきた」が取り上げられたことがあるようです。無料動画(dailymotion)でも、昨年に放送された番組を見つけました。現在32歳のその男性は、ちょうど小説家デビューしたばかりだったようで、それが取り上げられたきっかけなのかもしれません。テレビとなると、やはり話題性を好むのでしょうね。
NHKなどの特集番組では、事例を紹介する際には偏った内容にならないよう比較的配慮して紹介をしているように感じますが、仰天ニュースでは衝撃的な事実を垂れ流しているような印象を受けました。今回の場合は特にショッキングでしたよね。。
また、「治療現場のいま」と言いながらも、失礼ながら最新の治療を行なっているようには見えない病院が取り上げられていたような気もします。できれば最新の研究に近いところにいる専門家を呼んで、十分な時間を割いて解説をして欲しいなと思いました。
電気けいれん療法についても、同じように感じていらっしゃる方がいてホッとしました。やはりそうですよね。弟は、入院施設のある大きめの病院に通っていましたが、医師から電気けいれん療法について一度も話を聞いたことがありません。積極的に取り入れている病院とそうでない病院と、かなり差がありそうですね。
長文、失礼いたしました。
香蕗さんのブログも改めてゆっくり読ませていただきたいと思います。
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仰天ニュース、出張中でホテルでテレビをつけたらちょうど電気けいれん療法の最後の方でした。これ、紹介しちゃう?とまず思いましたね。
後追いでTwitterを見ると、「かわいそう」「こわい」と言ったコメントが多く、最後の方でも流れた再現ドラマの一部を見て・・・うーん、となってました。「100人にひとりなんだ!多い!」との驚きのコメントも多く、それを知ってくれたのはよかったか?とも。
でも、正しい理解?・・・ほど遠いような。
中村ユキさん最新刊の「家族の対応編」読みました。・・というか、高森先生の家族SSTについては多くの家族が知るべきと思っていて、勉強を進めています。
ご存知と思いますが、松本ハウスのおふたりは統合失調症の理解を深めてもらうよう各地で講演をされていて、昨年の9月の兄弟姉妹会全国大会のゲストとして来られて初めてその内容を拝見しました。
仰天ニュースよりは・・よほどおふたりの講演の方がよいかもしれません・・ね。
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まめお〜様
お返事が遅くなり、失礼いたしました。
そうですよねー。仰天ニュースで紹介された一部の症状例を見て、それがすべてだと思われてしまうことがないか心配になってしまいました。
高森先生の家族SSTは有名なのですね。SSTは兄弟姉妹の会などで実践してみたりしましたが、詳しいことは知らないので、まずは「家族の対応編」から読んでみようと思っています。
松本ハウスのお二人の著書は読みましたが、講演にはまだ参加したことがありません。機会を見つけて、ぜひ講演でお話を伺いたいなと思います。
コメントありがとうございました!