病識はないまま一人暮らしへ

弟は、1月末に無事に退院し、今は一人暮らしをしています。

 

昨年11月に、医師、看護師、精神保健福祉士の方々と、本人、家族で退院に向けた話し合いを行い、その後、アパート探しと一人暮らしの準備を始めました。

 

その中で、印象に残っていることを記録として残しておきたいと思います。

 

病識はないまま一人暮らしへ

医師から改めて統合失調症の宣告をされた弟

グループホームへの入居の話が流れてから、11月に改めて退院に向けた話し合いが行われました。その中で、また「統合失調症ではない」と説明する弟に対し、主治医が「私は統合失調症だと思います」とはっきり宣告。「なぜそう思うのか」と問う弟に、医師が事象を挙げて説明するのですが、それにはあまり納得できないようでした。

 

また、「仕事やアルバイトができたから統合失調症ではない」というような主張もあったのですが、主治医の「統合失調症でも働いている人もいますよ」という返答に対しては、意外に思ってい様子が見受けられました。入院中に疾病教育は受けているはずですが、やはり統合失調症のことを理解していないのだと思います。

 

客観的に弟を見ていると、“病気ではない”と思いたい気持ちが、自分の症状に気がつくことを邪魔しているような気がします。もし受け入れることができたら、少し気持ちが楽になる部分もあるのではないかと、もどかしく思うこともあります。

 

でも今回は、単に医師から告げられて聞き流すのではなく、病気である根拠を確認しようとしたところに進歩があったとも思っています。

 

気がつけないことも症状の一つ

自分が認知症であることに気づくことができない方と同じように、弟の場合も、状態の悪い時に自分の考えがまとまらなくなったり、被害妄想があることを自分ではわかっていません。弟が感じることのすべては弟にとっては事実であって、“妄想”ではないのです。

 

私たちは、自分の言動を客観的に振り返ったり、人に指摘されたりした時、それが勘違いであったり、思い込みであるということに気づくことができますが、弟は自分の感覚を疑うことができないようです。

 

例えば、本人曰く“断薬したのは薬がなくなったから”ということについて、自分でどこかにしまうなどしたはずなのに、いつもの場所から「なくなった」とあたかも誰かがとったかのように、未だにその時のことを言っています。

 

以前は、調子のよい時には被害妄想が現われたりすることはなかったのですが、何度も断薬を繰り返すうちに、症状が固定してしまったようにも感じます。なお、こういった症状は、あくまで一つの症状であり、統合失調症である方すべてに現われるわけではありません。

 

一人暮らしのアパート探し

病識のなさは相変わらずですが、これ以上入院していても何も変わりそうにはなく、状態も落ち着いていたので、一人暮らしへ向けた準備を始めました。前回の一人暮らしの時は、母と私で不動産屋さんを回って探したのですが、今回は前回お世話になった不動産屋さんに弟と3人で行ってきました。

 

私たちは、本人から頼まれて付き添いで行き、不動産屋さんへの話や契約書への記入などは本人が行いました。外部の人と話をするのは3年ぶりなので、かなり不安もあったかと思いますが、落ち着いて話せていたので安心しました。しかも、前回カラオケで周囲に迷惑をかけてしまったことについても謝った上でお願いするなど、しっかりとした対応ができていたと思います。

 

タイミングよく、ちょうど空いた物件があったようで、その後すぐに車で案内してもらうことに。病院の真裏でしたが、今回の家は前回よりもきれいで、本人も気に入ったようでした。

 

前回同様に審査もなく、前回話した病気のことを聞かれることなく、契約はスムーズに終わりました。すでに土壌ができていたので、本人がアパート探しの大変さをわかっていないようにも思えますが、とにかく今回、部屋を紹介してくださったのはありがたいことです。不動産屋さんが、大家さんからかなり信頼されているのだと思います。

 

一人暮らしのアパートが決まってからはスムーズに進み、外泊訓練をしてからの退院となりました。その間も、その後も、全く問題がないわけではありませんでしたが、ひとまずは無事に退院することができたのでした。